10.「皆のもの橋をかけよ!」
武庫川河畔の村、生瀬。
淨橋寺の誕生秘話
鎌倉時代中期、承久の乱の後、ひとりの僧が、京都から有馬を目指し旅に出た。途中生瀬の琴鳴山のふもとを通りかかった所、山賊が襲って来た。声を荒げ、刃物を振りかざす山賊たち。共にいた武士が戦おうとするのを差し止めて、その僧は静かに念仏を唱え始め、山賊たちに仏の道を諭した。
「今までの罪滅ぼしに、通行する人のために此の急流に橋を架けなさい。そして、まっとうな生業で生活できるよう今後は、橋の通行料を取りなさい。」
山賊たちはその言葉に心を打たれ悔い改める。
僧は、この橋の名を「淨橋*1」と名付け、後にこの近くに「淨橋寺」という寺を建て、念仏の道場とした。この僧の名を「証空」といい、浄土宗の開祖法然の跡を継ぎ、京都西山の善峯寺や光明寺を中心に布教活動につとめたため、人々からは西山上人とよばれた。
淨橋※1
現在の生瀬橋の辺りにかかっていた。
歴史秘話にしのみや【ウブスナ】vol.3-10