川沿いに南北に長く広がる夙川公園の周辺には、南から阪神本線・香櫨園駅、JR神戸線・さくら夙川駅、阪急神戸線・夙川駅、そして阪急甲陽線・苦楽園口駅と、実に4つもの鉄道駅があります。
それぞれの駅を起点に北へ南へ、夙川散策をゆったりと楽しんでみてください。
北へ歩いて甲山へ
夙川の堤に立って山のほうを眺めてみてください。ぽっこりとお椀を伏せたようなやさしくて丸いカタチの山が見えますね。それが甲山(かぶとやま)。西宮のシンボルでもあり、市民の心のふるさとです。
JRさくら夙川駅や阪急夙川駅から北へのコースは甲山を見ながら歩くことになります。爛漫の桜と甲山は絵になる光景。途中絶好の撮影ポイントもあり、カメラを構える人を多く見かけます。歩くのに自信がない人は、阪急苦楽園口駅を起点にしてもたっぷり楽しめます。
夙川河川敷公園の北の端、銀水橋を越えてさらに歩くと、北山緑化植物園があり、笹部桜をはじめいろんな桜を見ることができます。
健脚の人なら阪急甲陽園駅から北山公園ハイキングコースや甲山森林公園、神呪寺まで歩いて道中のヤマザクラを楽しむのもおすすめです。
夙川から阪急甲陽園駅にかけての通りには、雑誌でもよく紹介されるおしゃれな店がたくさんあります。カフェやレストランもいろいろありますが、中でもこのあたりは「スイーツロード」と呼ばれるほど、洋菓子工房が集まっています。「花より団子」「花も団子も」という方は、ぜひこのまちで食べ歩きを堪能してください。
標高309mの甲山。その昔、神功皇后が兜(かぶと)を埋めたためこの名がついたとの言い伝えがありますが、その形状は、まさに兜そのもの。
このほかにも、古代、神が降り立った「神の山」や、大阪湾から見て「向こう山」(武庫山)が転じて「甲山」になったなど諸説があります。つまり、それほど古くから人々に親しまれきたということ。遠足やハイキングのコースとして市民にはなじみが深い山です。
南へ歩いて御前浜へ
夙川の河口に向かって歩くなら最寄り駅は阪神香櫨園駅。夙川をまたぐ駅舎はレトロなデザインで、「近畿の駅100選」にも選ばれています。
ここから南のゾーンは、お花見シーズン中でも北側に比べて混雑がやや少ない静かな場所。ゆっくりと観桜したい人にはおすすめです。香りの良い桜「大島桜」が咲いています。
途中にかかる葭原橋は公園オープン当時の面影を残す風情ある佇まい。さらに南へ、浜夙川橋を過ぎれば海に出ます。
自然の砂浜が残る御前浜(香櫨園浜)にはさまざまな植物や生き物が生息し、浜辺で遊ぶ親子連れや犬の散歩をする人、渡り鳥の観察をする人なども多く、ゆったりと時間が流れる都会のオアシスとなっています。
幕末に勝海舟の勧めにより建造された西宮砲台も、歴史好きなら要チェック。
“香櫨園”という名前は、明治40年(1907)にオープンし、開設者である香野蔵治と櫨山喜一にちなんで名付けられた「香櫨園遊園地」に由来します。
この遊園地は約8万坪という広大な敷地にウォーターシュート、動物園、音楽堂、運動場など当時としては珍しい施設が多数設けられ、関西では最大の遊園地として親しまれました。大正2年(1913)に閉園となりましたが、「香櫨園」の名は今も駅名やその辺り一体の呼び名として残っています。