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「西宮まちたび博」のプログラムのひとつ、「W.M.ヴォーリズ建築初!国指定重要文化財の校舎で学ぶ 神戸女学院を体感する!」に行ってきました。
西宮市の神戸女学院の校舎12棟が本年、2014(平成26)年、国の重要文化財に指定されました。神戸女学院は1875(明治8)年の創立で、1933(昭和8)年に岡田山の丘上の現在地に移転し、米国出身のウィリアム・メレル・ヴォーリズが設計した校舎が建築されました。
10月から始まった「西宮まちたび博」では。実に112種類ものプログラムをご用意していますが、10月18日(土)に、その一つ「W.M.ヴォーリズ建築初!国指定重要文化財の校舎で学ぶ 神戸女学院を体感する!」に参加してきました。
これらの校舎は、ヴォーリズ設計の代表的な建築であり、日本国内のヴォーリズ建築の建物としては初めて重要文化財に指定されました。しかも、第二次世界大戦と阪神淡路大震災という二つの大禍をくぐりぬけて、今なお神戸女学院の教育のための器として大切に使用されている校舎です。今回のプログラムでは、現役学生のガイドに、彼女たちの視点で案内していただきました。
緑あふれるキャンパスの中を、緩やかに上がる坂道や噴水のある中庭を散策しながら、クリーム色の外壁に赤銅色の瓦を葺いたスパニッシュ・ミッション様式の校舎群を回遊し、芸術性だけでなく、実用性にも優れた、その一見の価値ある美しさをたっぷりと堪能しました。さらに、社交館では学生に人気の岡田山弁当をいだたくなど、キャンパスライフも体感できることができました。
- 重要文化財の神戸女学院ヴォーリズ建築は通常は公開はしていません。見学は、①一般公開日の見学(本年度は2015年3月に12回の見学ツアーを予定)、②神戸女学院主催の公開講座等終了後の見学 のいずれかとなっています。詳しくはこちらをご覧ください。
- W.M.ヴォーリズ(1880~1964)の生涯については、その妻で、神戸女学院卒(音楽部ピアノ科1期生)でもある一柳(ひとつやなぎ)満喜子(1884~1969)の一生を描いた、神戸女学院卒の作家である玉岡かおる氏の著作「負けんとき ヴォーリズ満喜子の種まく日々」が本年8月に新潮社で文庫化され、容易に知ることができるようになりました。しかも、文庫巻末の解説は神戸女学院大学名誉教授の内田樹(たつる)氏が、自分自身が21年間過ごしたヴォーリズ建築のキャンパスを10ページにわたり説明しており、大変興味を引きます。
- 今回ご紹介した「西宮まちたび博2014」のプログラム「W.M.ヴォーリズ建築初!国指定重要文化財の校舎で学ぶ 神戸女学院を体感する!」は、今年度は2015(平成27)年3月28日(土)にも予定されていますが、事前予約制(定員30名)で、定員を超えた場合は抽選となります。詳しくはこちらをご覧ください。
- 「西宮まちたび博2014」では、この他にも魅力的なプログラムをたくさんご用意しています。詳しくはこちらをご覧ください。
神戸女学院のキャンパスへの入り口である正門(重文)。ヴォーリズは景観との調和を重んじ、緑あるれる岡田山のキャンパスを設計しました。正門を入ると、緩やかに上がる、自然に抱かれた坂道が続きます。
坂道を抜けると最初に現れる音楽館(重文)。タイルなどを多用した様々な壁面装飾が見事です。レッスン室からは楽器を奏でる音が聞こえてきます。
音楽館の入り口には「竪琴を弾く乙女」のレリーフが配されています。
優美な装飾が施された音楽館の屋根に見えるのは、「笛を吹く少年」です。
図書館(重文)の壁面にも、地中海様式のレリーフが意匠として美しく刻まれています。
図書館1階ホール。柱頭のレリーフが見事です。
今も学生が利用している図書館2階の閲覧室。高い天井に描かれた文様が印象的です。北側に大きく開かれた、美しい縦型アーチ型の窓は、どの時間帯でも自然光が届くようにとの配慮です。
図書館内部は、机に作り付けのスタンドをはじめとして、建設当時のコンセプトにそった全ての調度品が今もなお、十分に機能しており、椅子や机の装飾まで、見事なまでに、統一したイメージが貫かれています。
図書館を通り抜けると、噴水池を中心に中庭があり、中庭に正面を向ける4つの建物があります。図書館、理学館(写真左)、総務館(写真右)、文学館。4つとも重要文化財です。それぞれの建物は異なるデザインでありながら、統一感を保っており、ヴォーリズ建築の最高傑作とも言われています。
中庭に面する理学館(重文)。噴水池を中心に文学館と相対しています。現在は人間科学部の校舎として使用されています。
総務館(重文)。法人事務棟として使用されており、1階に総務課と経理課、2階に院長室、チャプレン室などが配されています。中庭と反対側に講堂と礼拝堂が隣接しています。総務館、講堂及び礼拝堂は3つの機能を備えた1つの建物であり、内廊下でつながっています。
中庭に面した文学館(重文)。正面五連窓が特徴的です。主に文学部の授業に今も使用されています。
文学館西面の入り口。ヴォーリズは、一つ一つの建物ごとに、タイルや照明器具などの意匠や装飾の細部まで徹底してこだわりました。
総務館に隣接する講堂(重文)。アーチ型の天井が特徴的で、800名以上を収容できます。礼拝が行われるほか、入学式や卒業式などの式典、大人数が集うイベントにも活用されています。
講堂2階には大きなパイプオルガンが配されています。
総務館に隣接する礼拝堂(重文)。一番奥の、7本の蝋燭をかたどったステンドグラスが特徴的です。休日には卒業生などの結婚式も行われています。
総務館の玄関ホール。シンメトリーに配された、階段を中心として設計された美しさが見事です。
敷地に点在する建物が屋根付き渡り廊下でつながれていることも、ヴォーリズ建築の大きな特徴です。その窓から差し込む光まで設計された美しい回廊です。
購買でおみやげタイム。カレンダー、ボールペン、メモ帳、クリアファイルなど、神戸女学院のロゴ入りオリジナルグッズが揃っています。
学生の社交の場である社交館(重文)の暖炉。建築当時は実用的な暖房器具として設置されましたが、そのような暖炉にもそれぞれに意匠が施されています。
最後は食堂で学生人気の岡田山弁当を昼食として全員でいただきました。
参考文献
- 学校法人神戸女学院「神戸女学院岡田山キャンパス ― ヴォーリズ建築の魅力とメッセージ」(2013年10月発行)非売品
- 神戸女学院大学 入試情報サイト 動画紹介コンテンツ「ヴォーリズ建築の魅力」(12:13)http://kobe-college.jp/movie/vories.php
(SH)