- Home
- まちたび にしのみや , 新着一覧 , 新着情報
記事の詳細
「西宮まちたび博」のプログラムのひとつ、「工房で芯から作る 和ろうそくづくりと絵付け」に行ってきました。
日本古来の灯り、和ろうそく。西宮市の今津にある「松本商店」は、全国に30店舗ほどしかない和ろうそく屋の一つで、兵庫県伝統的工芸品指定の和ろうそくを製造・販売しています。
10月から始まった「西宮まちたび博2014」では、実に112種類ものプログラムを用意していますが、10月25日(土)に、その一つ「工房で芯から作る 和ろうそくづくりと絵付け」に参加してきました。
これは、和ろうそく屋「松本商店」で、竹串に和紙とイ草を巻きつけ灯芯を作る「芯さし」から、ハゼの実から取れるロウを手で何度も塗っては乾かす「下掛け」や「上掛け」、仕上げの「絵付け」まで、伝統の技を一つ一つ体験しながら、オリジナルの和ろうそくを作るものです。
単なる「絵付け」だけではなく、ろうそく作りの全行程を自分自身でやってみるという、きわめて貴重で珍しい体験でした。
- 今回ご紹介した「工房で芯から作る 和ろうそくづくりと絵付け」は、今年度は11月22日(土)と12月13日(土)にも予定しております。詳しくはこちらをご覧ください。
- 「西宮まちたび博2014」では、この他にも魅力的なプログラムをたくさん用意しています。詳しくはこちらをご覧ください。
西宮市の今津にある「松本商店」の創業は1877(明治10)年。今なお、昔ながらの材料と製法で、ろうそくを製造しています。西洋ろうそくの普及により減少の一途をたどっていた和ろうそくも、近年では、その神秘性、姿の良さ、火持ちの良さ等々が見直され、その癒し効果を求めて、インテリアとしての「和の灯り」の評価が高まっているようです。
和ろうそくの製造方法は、一本一本を手で作る「清浄生掛け(しょうじょうきがけ)」と、型に流して作る「型流し」があります。今回は一本一本手作りの職人の技に挑戦しました。
まずは、ろうそくの芯を作る「芯さし」という作業です。竹串に和紙を巻き付け、その上にイ草(藺草)の茎の髄(ずい)と呼ばれる白い糸状のものを巻いていきます。柔らかいスポンジ状の髄は、その毛細血管作用によって油を吸収し、燃焼させる灯芯になります。
竹串にイ草を巻いた後は、真綿をネット状にきつくかぶせて、イ草がほどけないようにします。
和ろうそくの灯芯のほとんどは、世界最古の木造建築として知られる法隆寺の近くの、奈良県安堵(あんど)町で作られています(2枚後の写真参照)。一番左は安堵町で作られ、「松本商店」でも使われている灯芯。真ん中は、筆者が「松本商店」の職人さんに手伝ってもらいながら作った灯芯。一番右は、筆者が一人でやっとこさ作った灯芯。お粗末な出来上がりがお恥ずかしい限りです。
灯芯にロウをなじませ硬化させ、次の生掛け(きがけ)をしやすくする「芯締め」という作業。鍋の中には、50℃位に熱したロウが入っており、その中に灯芯をひたしてから乾かす作業を数回繰り返します。まずは職人さんがお手本を示します。(実際のろうそく作りでは、職人さんの作業はこのように1本ずつではありません。手に何本もの灯芯を持ち、まとめて作業します。)
和ろうそくの原料のロウは、食物の櫨(はぜ)の木の実から採れる油で、これを木蝋(もくろう)といいます(写真右上が櫨の木の実)。西洋ろうそくの原料となる石油製品のパラフィンにはない、独特の粘りを持ち、食品衛生法に適した安全性をもっていて、我々の生活の中に数多く使用されています。たとえば、化粧品の口紅、ハンドクリーム、軟膏、座薬、クレヨン、色鉛筆、お相撲さんのビン付け油等です。
職人さん(右)の指導で、参加者(左の二人)が「芯締め」を実践します。
灯芯を左の鍋の九州産の櫨の実から採れたロウにひたしてから、上の写真のように台に立てかけて乾かす作業を数回繰り返します。
灯芯にロウがなじんで硬化したら、次は右手と左手のバランス感覚で、「塗っては乾かし」の作業を繰り返します。右手を台の上で前後に動かして、灯芯をくるくる回しながら左手で溶けたロウを目的の太さまで塗っていきます。この作業を「生掛け(きがけ)」と呼びます。職人さん(左)の指導で、参加者(右の二人)が「生掛け」をしています。「生掛け」は2段階あり、まずは下地作りともいう「下掛け(したがけ)」です。ちなみに、今回は体験プログラムなので、参加者はゴム手袋をしていますが、実際の現場では職人さんは素手でこの作業を行います。
ほぼ目的の太さになったら、こんどは愛媛県で採れた櫨(はぜ)の実から絞った木蝋(もくろう)を表面に塗る「上掛け(うわがけ)」という作業です。ロウの種類が異なるので色が違いますが(左の鍋の中のロウが九州産、右のボールの中のロウが愛媛産)、ロウが溶ける融点が、「上掛け」の愛媛産のロウは、「下掛け」の九州産のロウより数度低く、灯芯に点火した時に、中心部のロウが先に溶けるため、ロウが外側に流れ出さないようにする意味合いもあります。昔の人の工夫ですね。(西洋ロウソクは点火すると外側にロウが溶けだしていきますよね)
頭の部分の芯出しをする「頭切り」の作業。巨大な鉛筆削りのような機械が回っており、頭の芯のまわりのロウを摩擦熱で溶かして、芯を出します。
ろうそくから竹串を抜き、寸法をそろえる「尻切り」という作業です。包丁を左の鍋の溶けたロウの中にひたして熱してから切るので、力を入れなくても、スーと切れます。今回は6号(約12cm)のろうそくを作りました。竹串を抜いたところは空洞になるので、ろうそく立てにろうそくを立てる時にその穴を利用します。
最後は「絵付け」です。水溶性のアクリル絵具で、パンフレットや見本のろうそくを見ながら、思い思いの絵を描きました。
筆者が描いた、西宮市の観光キャラクター「みやたん」と、そのお友達の「みにゃっこ」の絵。ろうそくの長さも太さも仕上がり具合も微妙に異なるところはご愛嬌ということで。
(SH)